死への旅
Destination Unknown

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ノンシリーズものの長編13作目(メアリ・ウェストマコット名義の作品を除く)。
1954年、John Bull (25 September ~ 23 October 1954)に簡略版が連載された後、同年11月にCollins社から刊行された。 米国では1955年、Chicago Tribune (12 April ~ 9 June 1955)に「Destination X」のタイトルで連載された後、同年Dodd, Mead社から「So Many Steps to Death」のタイトルで刊行された。
日本語初訳は1955年の『死への旅』(妹尾アキ夫訳 ハヤカワ・ポケット・ミステリ)。

早川書房

(日本語版翻訳権独占)
1955
死への旅
妹尾アキ夫訳 早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ(227)
本書『死への旅』は本格物の大御所クリスティーとしてはめずらしく本格探偵小説ではない。 おなじみのベルギー人の小男エルキュール・ポアロも出てこないし穿鑿好きの老嬢ジェーン・マープルも登場していない。 共産主義国と冷い対立を続ける自由主義諸国家の著名な科学者、医者など重要人物が次々と失踪する事件を取りあつかつている。 ZE核分裂の研究を続ける原子科学者の失踪をめぐって、現実からの逃避を試み、遠くアフリカ北部の仏領モロッコまでやって来た薄幸の女性をヒロインとして繰りひろげられる一大メロドラマである。 だが、さすがはクリスティーで、探偵小説的な伏線が縦横に張りめぐらしてある上最後に判明する、それら一連の事件の黒幕になつていた人物の動機にも意外性があり、本格愛好者にも充分喜んでいただけることであろう。

1971年2刷

1977
死への旅
高橋豊訳 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫(HM1-24) ISBN:9784150700249
東西の冷戦下の西側陣営において核分裂研究の重要人物が次々と失踪していった。そして今、ZE核分裂という新しい原子力にめざましい成果をおさめた科学者ベタートンが行方を絶った。どこへ消えたのか。共産国側の仕業なのか。イギリス情報部は必死の捜索を開始し、やがてベタートン夫人に瓜二つの女性が身代りスパイとなって、極秘裡に未知の目的地へと潜入した!本格物にまさるとも劣らぬ女史会心のスパイ・スリラー。
解説:数藤康雄「クリスティーの冒険ミステリを読む楽しさ」
表紙:真鍋博
登場人物
トーマス・ベタートン失踪した原子科学者
オリーヴ・ベタートントーマスの後妻
ボリス・グリドル少佐。トーマスの従兄弟
カルヴィン・ベイカー旅行者
ミス・ヒザーリントン同上
アンリ・ローリエ観光客。フランス人
アリスタイディーズ石油王
アンドリュー(アンディ)・ピーターズ化学者
トリキル・エリクソン物理学者
ヘルガ・ニードハイム内分泌医学の大家
ルイ・バロン細菌学者
ポール・ヴァン・ハイデムオランダ人の大男。医師
ドクター・ニールソン副総裁
サイモン・マーチソン科学者
ビアンカ・マーチソンサイモンの妻
ヒラリー・クレイヴェン自殺志望の女
ジェソップイギリス情報部の部員
レブランフランス情報部員。ジェソップの親友
2004
死への旅
奥村章子訳 早川書房 クリスティー文庫(90) ISBN:9784151300905
東西の冷戦でふたつに引き裂かれているヨーロッパ。その西側陣営で科学者たちが次々に失踪していた。いままた、めざましい成果をおさめた科学者ベタートンが行方不明となる。東側の陰謀か、誘拐か? 事件を追う英国情報部は、ベタートンの妻に瓜ふたつの女性をスパイとして敵地に放つ……会心の冒険スパイ小説。
解説:中辻理夫「彼女なりのタフネス」